NHKの電子音楽のルーツ昭和5年放送の「夏八景」を立体音響により再創造する
2025年は日本でNHKがラジオ放送を開始してから100年を迎える年です。
NHKでは放送開始直後からラジオドラマを始めとする聴覚のための純粋な芸術への挑戦が行われており、昭和5年(1930年)には擬音(効果音)を主役とした作品「夏八景」が放送されるに至ります。
これは映画「ベルリン─大都会交響楽─」などの作品で知られるヴァルター・ルットマン監督が、映画のサウンドトラックを使用して制作した電子音楽の始祖「ウィークエンド」を発表したわずか2ヶ月後で、本格的な国産トーキー映画「マダムと女房」が公開される前年のことです。
すなわち「夏八景」は映画の効果音などの先例のない状況で、独自のアイディアを結集させることにより、現実音を模した擬音を駆使して制作されたわけです。それは電子音楽やフィールド・レコーディングの先祖のような存在と言えるかもしれません。
昭和5年のNHKには実用に足る録音機は存在せず、生放送で行われた「夏八景」はもちろん現存していません。
そこで「夏八景」の梗概をもとにして、ミュジック・コンクレートやフィールド・レコーディングの分野でも活躍する2人の作曲家が、現代的な視点から「夏八景」の再創造を試みることになりました。
複数のスピーカーを駆使して空間的な立体音響を実現する2025年版の「夏八景」の上演は、放送局を舞台に音響の世界を追究した100年に及ぶメディア・パフォーマンスの歴史を再確認するまたとない機会となることでしょう。

EVENT開催概要
- イベント名
- 書籍「NHKの電子音楽」発売記念
NHKの電子音楽のルーツ、昭和5年放送の「夏八景」を立体音響により再創造する - 日時
- 2025年10月12日(日)
昼公演14:00〜15:30(開場13:30)/夜公演 17:00〜18:30(開場16:30) - 会場
- MEDIA SHOP メディアショップ
京都市中京区大黒町44 VOXビル1F/075–255–0783
→ Google map - 出演
- 檜垣智也(作曲家/東海大学准教授)
清水慶彦(作曲家/大分大学准教授)
川崎弘二(電子音楽研究) - 料金
- 一般1,500円(各回)/学生1,000円(各回)
予約優先 各回定員20名
メールにてご予約お願いいたします→ kojiks0317@gmail.com - 協力
- (株)フィルムアート社
composers / producer作曲 / プロデュース

プロフィール
檜垣 智也 | 作曲家、アクースモニスト。アクースマティックの可能性を追求。世界中のアクースモニウムで演奏し、リサイタル活動は高く評価されている。第5回国際リュック・フェラーリ・コンクール最高賞(2003)、第18回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品(2014)、大阪文化祭奨励賞(2022)など受賞、入選多数。ソロアルバムは「豊饒の海」(Motus)「入院患者たち」(engine books)など。愛知県立芸術大学大学院修了。博士(芸術工学、九州大学)。東海大学准教授、大阪芸術大学大学院客員教授。 |
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清水 慶彦 | 作曲家/怪談作家。近年はフィールド・レコーディングやサウンドスケープ・コンポジションに注力しつつ、奇談怪談の収集著述に勤しむ。作曲家として作品集CD『六相円融』(studio N.A.T)が『レコード芸術』誌推薦盤に選定、作品はニューヨークでの音楽祭「ミュージック・フロム・ジャパン2018」等でも上演されている。怪談作家(筆名:丸太町小川)として単著怪談集『大分怪談』(竹書房怪談文庫)、『実話拾遺うつせみ怪談』(竹書房怪談文庫)など。京都市立芸術大学卒、同大学院修了、博士(音楽)。大分大学教育学部准教授。 |
川崎 弘二 | 1970年大阪生まれ。2006年に「日本の電子音楽」、2009年に同書の増補改訂版(愛育社)、2011年に「黛敏郎の電子音楽」、2012年に「篠原眞の電子音楽」(以上 engine books)を上梓。2014年にNHK Eテレ「スコラ 坂本龍一 音楽の学校 電子音楽編」に小沼純一/三輪眞弘と出演。2018年に「武満徹の電子音楽」(アルテスパブリッシング)、2023年に松井茂との共著「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」(フィルムアート社)を上梓し、2022~23年に雑誌「AGI」において「メルツバウ・ヒストリーインタビュー」を連載。https://kojiks.sakura.ne.jp/index.html |