武満徹2018 この秋、武満徹を聴く




武満徹2018 この秋、武満徹を聴く

 書籍「武満徹の電子音楽」(アルテスパブリッシング)の刊行を記念して、この秋、京都では武満徹にまつわる3つのイベントを開催します。

 日本を代表する現代音楽の作曲家・武満徹はミュジック・コンクレートと呼ばれる電子音楽だけでなく、ラジオドラマ/演劇/長編劇映画/ドキュメンタリー映画/テレビドラマなどあらゆる大衆に向けてのメディアを舞台として、晩年に至るまで電子テクノロジーを援用した音楽を積極的に手がけていました。

 そして、武満徹は万国博覧会や音楽祭などの大規模なメディア・イベントの企画なども担当し、そこには電子テクノロジーの存在が強い影響を与えています。

 本イベントでは、まず「武満徹の電子音楽コンサート」によって、武満徹の主要な電子音楽をコンサート形式で鑑賞し、レクチャーとリスニング「武満徹の電子音楽のデジタル修復」によってその創作の秘密に迫ります。そして、シンポジウム「映画のサウンドトラックにおける武満徹の電子音楽」ではマスメディアと電子テクノロジーの関係を取り上げます。

 このイベントを通じて、武満徹という作曲家が辿った創作の軌跡から、戦後日本におけるメディア・パフォーマンスの歴史が体験的に概観できるものと考えています。
                         川崎弘二、檜垣智也




1.「武満徹の電子音楽」コンサート
  檜垣智也、川崎弘二

2018年10月9日(火) 同志社大学寒梅館クローバーホール
18:30開場 19:00開演
料金:当日1,500円均一
同志社大学学生・教職員(同志社内諸学校含む)無料

ご予約:kojiks0317 (a) gmail.com(川崎)

主催・お問合せ:同志社大学今出川校地学生支援課 tel 075-251-3270
駐車場・駐輪場はございません。公共交通機関をご利用ください。


 作曲家・武満徹は、ミュジック・コンクレートと呼ばれる電子音楽の、日本におけるパイオニアの一人でした。このコンサートでは、武満徹が1955年に発表した「ルリエフ・スタティク」から1960年の「水の曲」に至る主要なミュジック・コンクレートを、コンサート形式で鑑賞します。

 各作品の上演は、アクースモニウムというスピーカー・オーケストラの生演奏により、作曲家/演奏家である檜垣智也が行います。また、一部の作品はアニメーション作家・クリヨウジ(久里洋二)の映像作品を伴って上演され、また、宇都宮泰による最新のデジタル修復が施された作品も初公開され、さらに、デザイナー・佐々木暁により製作されたスライドを伴う作品も上演されます。

 戦後、電子テクノロジーによる新しい音楽の地平を切り拓こうとした武満徹の目指したものは何だったのか? 川崎弘二檜垣智也によるアフタートークも含め、その成果を俯瞰的に体験できるコンサートにぜひご参加ください。


▪️上演曲目
・武満徹「ルリエフ・スタティク」(1955)※
・武満徹、谷川俊太郎「ヴォーカリズムA・I」(1956)※※
・武満徹、谷川俊太郎「木・空・鳥」(1956)
・武満徹、谷川俊太郎「クラップ・ヴォーカリズム」(1956)
・武満徹「ユリディスの死」(1956)※
・武満徹「空、馬そして死」(1957)
・武満徹「静かなデザイン」(1960)※※※
・武満徹「水の曲」(1960)
・檜垣智也「沈黙の木 武満徹に捧げる」(2003)

・川崎弘二、檜垣智也 アフタートーク

※宇都宮泰によるデジタル修復版
※※クリヨウジ(久里洋二)のアニメーション「LOVE」により上演
※※※デザイナー・佐々木暁の製作によるブルーノ・ムナーリ「ダイレクト・プロジェクション」を伴う




2.「武満徹の電子音楽」のデジタル修復
  宇都宮泰、川崎弘二

2018年10月14日(日) 
18:00開場 18:30開演
予約:2,000円 当日:2,500円(学生証提示で予約・当日ともに1,500円)

ご予約:soto-kyoto.jp 090-7875-0018


 武満徹が初めてミュジック・コンクレートを作曲したのは、いまから63年前の1955年のことです。これまでCDによって公開されていた武満徹の初期の電子音楽は、ノイズも多く、ダイナミックレンジも狭いものでした。

 それは当時の機材の未熟さによるものと考えられていましたが、このたび、最新のデジタル技術を用い、1957年に発売されたモノラルのアナログレコードをもとにして、音楽家・宇都宮泰が武満徹のミュジック・コンクレートのデジタル修復に挑戦しました。

 その結果、武満徹の初期ミュジック・コンクレートは、60年前の作品とは思えないほどの鮮烈さを持ち、いままで確認することが困難であった音の成分も多数含まれていることも明らかとなりました。本イベントでは宇都宮泰によるデジタル修復の実演と、修復された作品のリスニングを行います。


▪️イベント概要
・武満徹のミュジック・コンクレートについて(川崎弘二)
・デジタル修復作業の実演と解説(宇都宮泰)
・リスニング
 武満徹「ルリエフ・スタティク」(1955)
 武満徹、谷川俊太郎「ヴォーカリズムA・I」(1956)
 武満徹「ユリディスの死」(1956)
 諸井誠・黛敏郎「七のヴァリエーション」(1956)





3.映画のサウンドトラックにおける「武満徹の電子音楽」長門洋平、川崎弘二、檜垣智也

2018年10月20日(土) MEDIA SHOP
18:30開場 19:00開演
入場料1,500円

ご予約:kojiks0317 (a) gmail.com(川崎)


 武満徹は生涯に120本ほどの映画のための音楽を手がけており、晩年に至るまで電子テクノロジーを援用した作曲を多くの作品を通じて試み続けていました。

 書籍「武満徹の電子音楽」(アルテスパブリッシング)においても、急速に発展する電子テクノロジーを援用して、武満徹が「狂った果実」(1956)、「砂の女」(1964)、「怪談」(1965)、「心中天網島」(1969)、「愛の亡霊」(1978)、「乱」(1985)などの映画のための音楽を、どのようにして作曲していたのかを明らかにしました。

 本イベントでは、サントリー学芸賞を受賞した「映画音響論 溝口健二映画を聴く」(みすず書房)などの著作で知られる長門洋平、近年、七里圭監督による実験的な映画のためのコラボレーションに取り組んでいる作曲家/演奏家の檜垣智也、そして、書籍「武満徹の電子音楽」の著者・川崎弘二を迎え、映像メディアを舞台とした武満徹の音楽についてのディスカッションを行います。



関連企画
ランガム・リサーチ・センター×宇都宮泰

2018年10月22日(月) environment 0g(大阪)

武満徹「水の曲」(1960) 宇都宮泰による3チャンネル・デジタル復元版上演予定








川崎弘二
1970年大阪生まれ。2006年に「日本の電子音楽」、09年に同書の増補改訂版(以上 愛育社)、11年に「黛敏郎の電子音楽」、12年に「篠原眞の電子音楽」、13年に「日本の電子音楽 続 インタビュー編」(以上 engine books)を上梓。CD「NHK 現代の音楽 アーカイブシリーズ」(ナクソス・ジャパン)における黛敏郎、湯浅譲二、松平頼暁、林光、石井眞木、一柳慧、実験工房の解説をそれぞれ執筆(2011〜13年)。2011年から雑誌「アルテス」にて「武満徹の電子音楽」を連載(2015年まで)。2014年にNHK Eテレ「スコラ 坂本龍一 音楽の学校 電子音楽編」に小沼純一、三輪眞弘と出演。2017年に芦屋市立美術博物館にて開催の「小杉武久 音楽のピクニック」展に企画協力、図録編集にて参加。2018年「武満徹の電子音楽」(アルテスパブリッシング)を上梓。相愛大学音楽学部非常勤講師。
http://kojiks.sakura.ne.jp/




檜垣智也 作曲・アクースモニウム演奏
1974年生まれ。愛知県立芸術大学大学院修了。フランス留学中にアクースマティックの作曲と演奏で注目を浴びる。2003 年に日本へアクースモニウムを紹介し、記録された音響とその空間表現をテーマに活動を展開。フランス国営視聴覚研究所音楽研究グループなど欧州を中心に招待公演多数。代表作に「豊饒の海」(2009-11)、「囚われた女~秋山邦晴のテープレコーダーのための詩による」(2013)は第18回 文化庁 メディア芸術祭 アート部門で審査委員会推薦作品に選出。九州大学大学院、愛知県立芸術大学大学院、大阪芸術大学ほか講師。現代音楽プロダクションMOTUS(パリ)と国際アクースマティック芸術祭FUTURA の常勤演奏家および講師。
http://www.musicircus.net




宇都宮泰
70年代に塩谷宏、諸井誠に師事
http://utsunomia.com




長門洋平
1981年生まれ。総合研究大学院大学博士課程修了。専門は聴覚文化論、映画学。『映画音響論 溝口健二映画を聴く』(みすず書房、2014年)で第36回サントリー学芸賞受賞。共著に『戦後映画の産業空間 資本・娯楽・興行』(森話社、2016年)など。京都精華大学ほか非常勤講師。



フライヤーpdfダウンロード