小杉武久の映像と音楽 正誤表


■p23からp24の「Wols」を以下に差し替え

 一九六四年四月十三日から二十八日にかけて、南画廊では「ヴォルス展」が開催された。城之内元晴は「閉館後なら撮影してもいいよという許可がもらえた」1) ことから、カメラマンの川尾俊昭と「ファインダーをのぞかず、画角も随意に、お互いの直感で駒撮(一秒二十四駒)しよう。それも二駒、三駒、五駒打ちとアトランダムに撮影する」2) というコンセプトによってヴォルスの絵画を撮影した。川尾は「撮影したフィルムは、現像所に出し、ラッシュ(ポジ)を作ります。だがこれを受け取るお金がありませんでした。/現像に出したことも忘れる一年以上もたった頃、現像所から受け取りに来なければ処分せざるを得ないとの通告が届いた」3) と述べている。
 そして、石子順造は「SD」誌の一九六九年九月号において「アクション・ペインティングという美術用語にならって、アクション・フィルミングといった使い方はできないものだろうか……というのが、映画『ヴォルス』を見終えた直後のぼくの感想だった。試写室に当てられたお茶の水駅に近いとあるビルの試写室で、床に新聞紙をしいて、ぼくは、もう数年前から撮影したとだけ伝え聞いていた映画を、50人ほどの人たちと見た。(略)5年前に撮影を終えながら、3年間もそのフィルムを現像所に放置しておき、昨年やっと引き出してきて、一切編集しないままで映写してみたというのも、それなりに理解できるのである。初めて試写した時、彼は、まるで他人の映画を見ているような気がしたそうである。そしてそう感じとる限りで、小杉武久-アルトサックス 風倉匠-チェロ、小池竜-ベース 3名の即興演奏を録音した音楽も、画面の流動と合っていたと思える」4)と述べている。
 この発言から城之内は一九六八年にフィルムを現像所から受け取り、小杉らによる演奏の録音を使用して六九年には映画「Wols」を完成させていたことが分かる。なお、この時点で小杉と小池はまだタージ・マハル旅行団を結成しておらず、小池は仕上げの現場にも立ち会っていたようである。ただ、刀根康尚は「美術手帖」誌の一九七一年一月号に寄稿した文章において「三年ほど前に昔南画廊に押しかけて三日間ぶっ続けで撮りまくった『ヴォルス』が現像所から出てきたから見に来いと連絡があった。現像に出してから四年もたっている。これは、音楽を作っていない私の責任もあるが、まだ編集を終わった段階で未完である」5)と述べ、さらに刀根は「美術手帖」誌の一九七一年十月号においてもヴォルスの絵画を撮影した映画は未完であると記している。これらの刀根の発言から、「Wols」はさらに手を加えて音楽も差し替える予定があったものと考えられる。

1)川尾俊明「城ちゃん』との想い出と作品『WOLS』の制作メモ」『「城ちゃん」在りき 城之内元晴回想文集』七月堂(二〇一一年一月)三一頁
2)註1に同じ。
3)註1、三二頁
4)石子順造「眼と眼ならざるもの 城之内元晴の映画『ヴォルス』」『SD』五八号(一九六九年九月)八四〜八五頁
5)刀根康尚「城之内元晴」『美術手帖』三三七号(一九七一年一月)八二頁



■p36 *17を以下に差し替え

無記名「発禁映画『鎖陰』の内容と創造意欲 一流大学の映画研究会が製作した前衛作品」『週刊大衆』七巻二八号(一九六四年七月十六日)一〇八〜一〇九頁



■p38 「ある建築空間」を以下に差し替え

一九六四年十二月完成
ある建築空間
◎企画=鹿島建設、製作=日本技術映画社、プロデューサー=岩佐氏寿、脚本・監督=松川八洲雄、撮影=平木靖、音楽=間宮芳生、音響=小杉武久、助監督=飯村隆彦、ナレーション=金内吉男
◎35 mm/16㎜、カラー、十九分十八秒、日・英語版



■p38 一九六四年に以下を追加

一九六四年
白い影への対話
◎製作=ぐるーぷV、製作団=堀米直躬、青木正義、河野恒、土届由理子、丸山邦正、山寺寛明、監督=北村皆雄、執筆陣=土居由理子、山寺寛明、馬場和枝、福島佑子、北村皆雄、撮影=安西清、多和田修、田井克彦、音楽=小杉武久、美術=松目正毅、ハイレッド・センター、編集=福島佑子、出演=鈴木両全、権毅、Gerad Sablo、浜名武、土届由理子、奥村照夫



■p39 一九六八年に以下を追加

一九六八年
炎 1960~1970
◎製作=自主映画製作協議会、構成=山際永三、岡田道仁、北村隆子、飯島実、中島彰亮、音=大野松雄、小杉武久、声=林昭夫、字=岡美行、協力=岩波映画労働組合、グループびじょん、理研映画労組有志、映像社、演劇批評
◎16 ㎜、モノクロ、十一分三十七秒



■p39 「オープン・スペースを求めて」を一九六九年に移動したうえで以下に差し替え

一九六九年十一月十七日完成
オープン・スペースを求めて 大阪三菱ビルの場合
◎企画=大林組、製作=岩波映画製作所、製作=田中平八郎、監督・編集=谷山浩郎、脚本=中西直登、撮影=河端繁、音楽=小杉武久、録音=岡本光司
◎16 ㎜、カラー、十八分五十五秒



■p39 「WOLS」を一九六九年に移動したうえで以下に差し替え

一九六九年
WOLS
◎監督=城之内元晴、撮影=川尾俊昭、音楽=風倉匠/小池龍/小杉武久
◎16 ㎜、カラー、十八分十七秒



■p39 一九七〇年に以下を追加

一九七〇年八月完成
大阪に背骨を入れる
◎企画=大阪府、製作=日本映画新社、製作=森憲太郎、監督・脚本=谷山浩郎、脚本=中西直登、撮影=福島洋、音楽=小杉武久、録音=福田誠、解説=伊藤惣一、動画=菁英社
◎35 ㎜、カラー、二十八分


■p40 一九七四年に以下を追加

一九七四年
新宿ステーション
◎監督=城之内元晴、音楽=タージ・マハル旅行団
◎16 ㎜、モノクロ、十六分